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むかし、文吉という若者がおりました。ある日文吉は、隣村の落居という所で漁師をしている千吉の家に遊びに行きました。
「久しぶりだなぁ。」
などと、いろいろ話をしているうちに、夜中の11時になり外は真っ暗になってしまいました。
「もうこんな時間だ。早く帰らなくては。」
そう文吉が言うと、千吉は、
「もう帰るのかい?泊まっていけばいいのに。では、お土産に今日とれたばかりの魚をもっていきなよ。」
と新鮮な大きな魚をくれました。文吉は喜んで、その魚をさげて海岸沿いにぶらぶらと夜道を歩いていきました。
すると、はるか向こうの山の上あたりから、青い光が一つこちらに向かって飛んで来ます。
「うわっ、天狗だ!」
驚いた文吉は急いで浜辺にある小舟の中に逃げ込みました。そして、舟底に寝転がって、念仏を唱えながら身をひそめました。すると小舟ががたがたと激しく揺れ始めました。
「天狗の奴、魚をよこせということだな。」
文吉は、そう気が付いたので、持っていた魚を舟の外にほおり投げました。すると、急に舟の揺れがやみ、あたりも静かになりました。文吉が舟から顔を上げて見ると、天狗の姿はもうありませんでした。ですが、投げ出した魚は2つの目玉はきれいにえぐりとられ、そのまま砂の上にありました。文吉はそのままその魚を捨てて帰りました。
むかし、御前崎のこのあたりでは、よく天狗がでたそうです。そして、翌朝浜に出てみると目をえぐりとられた魚が砂の上にころがっているのでした。 |
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